まずサイズを決める:仕上がり寸法・塗り足し・セーフティゾーンを分けて考える
名刺デザインでいう「サイズ」には、大きく3つの意味があります。確認するときは分けて整理しましょう。
- 仕上がり寸法:裁断後に手元に届く実際の大きさです。日本では91×55mmが一般的で、90×54mmや90×50mmなども使われます。カードケースや名刺入れに収めるかどうかも踏まえて選びます。
- 塗り足し(ブリード):裁断のズレに対応するため、仕上がり線の外側に余分に伸ばす部分です。一般的には各辺2〜3mmを追加します。背景色や柄、写真は塗り足し線まで伸ばし、裁断後に白いフチが出ないようにします。
- セーフティゾーン(版面):文字や重要な図形を裁断線から内側にどれだけ離すかを示す範囲です。セーフティゾーンを設けないと、端に近い文字が裁断で欠けることがあります。必要な余白は印刷会社の裁断精度によって異なるため、デザイン前に確認すると安心です。
折り名刺、変形抜き、角丸などの場合は、仕上がり寸法だけでなく、折り位置、抜き型の輪郭、角丸の半径も指定する必要があります。
色と印刷方式:配色前に確認する
画面上で良く見えても、印刷結果が同じになるとは限りません。着手前に確認したいポイントは次のとおりです。
- カラーモード:印刷データはCMYKで作成します。画面表示用のRGBデータはそのまま印刷には使えません。濃い青、鮮やかな赤、蛍光色などはCMYKで再現できる範囲が限られるため、入稿前に校正紙や印刷会社の色見本で確認するのがおすすめです。
- 特色の必要性:ブランド指定の特色(例:特定のPantone番号)がある場合は事前に伝えましょう。特色印刷と4色印刷は工程が異なり、見積もりやデータ準備の方法も変わります。
- 印刷方式:デジタル印刷は小ロットや多バージョンに向き、オフセット印刷はある程度の部数と安定した色再現に向いています。方式によってデータ、用紙、最小ロットの条件が異なるため、先に決めてからデザインを詰めるとスムーズです。
- 黒い文字:小さな本文はK100の単色黒のほうが、4色重ねより鮮明になることが一般的です。最終的には印刷会社の指示に従いましょう。
用紙と表面加工:手触りとコストに影響
用紙や加工は見た目だけでなく、見積もりや制作期間にも直結します。デザイナーや印刷会社と確認しましょう。
- 用紙の種類と坪量:コート紙、マット紙、特殊紙、白カードなど、手触りや印刷のりは異なります。坪量は名刺のコシに影響します。低坪量は柔らかく、高坪量は硬いため、用途に合わせて選びます。
- 表面加工:マットPP、グロスPP、ニス引き、UV、金銀箔押し、エンボス、デボスなどがあります。加工ごとにデータの作り方が異なり、例えば箔押し範囲は別レイヤーや指示書きが必要で、完成イメージ図だけでは不十分です。
- 加工の組み合わせ:複数の加工を重ねるとコストや納期に影響し、相性が悪い場合もあります。必須の加工と省略可能な加工を整理しましょう。
- 両面印刷:表裏両面に印刷する場合は、どちらをメインビジュアルにするかを決め、情報量が多くならず焦点がぼやけないようにします。
内容とレイアウト:情報の優先順位を先に決める
サイズと加工を決めたら、載せる情報を整理します。そうしないとデザイナーが優先順位を推測するしかありません。
- 必須情報:氏名、役職、会社名、電話、メール、住所、Webサイトなど。重要度順に並べます。
- 任意情報:QRコード、SNSアカウント、スローガン、店舗情報など。QRコードはサイズと余白を確認し、小さすぎたり端に寄りすぎたりすると読み取りに影響します。
- 文字の階層:メインタイトル、氏名、連絡先、補足説明でフォントサイズやウェイトを変え、すべて同じ大きさにならないようにします。
- ロゴデータ:ベクター形式(AI、EPS、SVGなど)または高解像度PNGを用意します。低解像度JPGしかない場合は拡大するとぼやけるため、先に処理が必要です。
ブランドビジュアルがまだ整っていない場合は、当サイトのグラフィックデザインサービスでロゴ、フォント、基本ツールを一緒に整理してから名刺デザインに進むこともできます。
納品データ:完成データ・編集可能データ・ライセンスを区別する
デザイン後にどのようなデータを受け取るかは、依頼前に明確にしておきましょう。
- 印刷用完成データ:通常はPDFで、塗り足し、裁断線、必要な加工指示を含み、そのまま印刷会社に渡せます。
- 編集可能なソースデータ:AI、PSD、INDDなど。提供するかどうか、どの程度提供するかは納品範囲に含まれるため、事前に取り決めます。
- フォントと画像のライセンス:デザインに使用した商用フォントやストック素材のライセンスがデータと一緒に提供されるかは別途確認が必要です。フォントのライセンスがないと、後から自分で修正したり再印刷したりする際に制限がかかることがあります。
- バージョン管理:最終版がどれかを明確にし、印刷会社が古いデータを受け取らないようにします。
印刷会社とデザイナーへの確認リスト
以下をすり合わせてから着手すると、修正の往復を減らせます。
- 仕上がり寸法、塗り足し寸法、セーフティゾーン
- 片面か両面か、折りや変形抜きの有無
- CMYKか特色か、指定色番号の有無
- 用紙の種類、坪量、表面加工
- 印刷方式とおおよその部数
- 必須情報と優先順位
- ロゴや画像のファイル形式と解像度
- 納品データの種類、ソースデータの範囲、ライセンスの説明
これらすべてを一度に完璧に決める必要はありませんが、早い段階で印刷会社やデザイナーと確認するほど、校正や印刷のズレを抑えられます。





